フェイヨンの隠者 ~年老いた軍師の回想録~
その昔、ラグナロクオンライン(RO)のIris,EirサーバでGvGを戦った、叩き上げの元参謀がフェイヨンの酒場で静かに語る昔話。そして彼がかつて戦場にあった折、経験の中で得た、いくつかの教訓と知識。
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4,永久的な発展-同盟を結びし者たち-(46)
 「お待たせいたしました」
 高司祭が去って行った後、ほどなくして、話に興じていた二人のそばから声がかかった。
 二人が見やると、そこにはトレイに料理を載せてボーイが立っていた。
 「チェンリム鱒のホイル包み焼きと、お刺身でございます」
 恭しく頭を下げると、ボーイは老人の前に銀色の物体を乗せた大皿を置き、次いで若者の前に飛び跳ねた魚をあしらった皿を置いた。そこには生魚の切り身とおぼしき物が乗っている。
 次いでその皿の回りに小皿を配置し、あわせて黒っぽい液体が入った小さめの瓶を置く。
 「……?」
 ソースの一種なのは分かったが、若者にとっては見たこともない。においもこれまでのどのソースとも異なっていた。
 「あとはお酒になりますね。ご老師にはいつものボトルを。そちらのお方にはこれをご用意いたしました」
 と言ってトレイからテーブルへ移したのは、無色透明な液体に満たされた木製の枡だった。
 「では、ごゆっくりどうぞ」
 一通りテーブルサービスを完了すると、ボーイは再び恭しく頭を下げて去っていく。

 「では、改めて乾杯とするか」
 「そうですね」
 老人はブランデーが満たされたグラスを、若者は枡を手に取る。持ちなれないせいか、多少持ち辛そうではあった。
 両者はそれぞれの杯を軽く掲げると、口元へと運ぶ。無論一気飲みなどという無粋な真似をする二人ではなかった。
 軽く喫し終わって、杯を置く。
 「…ほぅ。これはなかなか美味しいですね」
 「悪くなかろう。どこの国でもそうじゃが、酒はとかく水を選ぶ。アマツにはわしも幾度となくたずねたが、かの地以上に水がきれいなところはほとんどなかった」
 「多少辛めではありますが、この澄み切った感覚がよいですね」
 「うむ。昔は高価じゃったが、今はさほど高い酒でもない。気に入ったのならじゃんじゃん頼みなさい。さて、わしはこれを頂くとしようかのぅ」

 老人は目の前にある皿の上に載った銀色の物体に目を止めると、やおらその上端に手を掛けて破り始めた。中から香草と川魚の良い匂いが漂ってくる。
 「アインブログにな」
 「はい?」
 アインブログといえば、シュバルツシルド共和国の工業都市の名だ。
 「かの地は鉱山と製鉄所が有名じゃが、鉄鉱石のほかにもさまざまな鉱石が取れるゆえに、鉄以外の金属が産出され始めていると聞いておる」
 「ほぅ…」
 「ぼーきさいととか言ったかな。鉄ほど頑丈ではないが、加工がしやすい金属を作る事ができるらしい。おそらくこれもその一つじゃろ」
 確かに、金属の光沢を持つ割には、まるで紙のようにやすやすと老人の手で裂けていっている。
 「技術の進歩というのは、見事なものですね。かつて私の知り合いのプロフェッサーがこう漏らしていました。『高度に発展した科学技術は、魔術と区別がつかない』と」
 「確かにな。じゃが、その技術に支えられた上で展開される人の営みというのは、過去も未来もさほど変わっておらんのかも知れぬよ」
 「…と申しますと?」
 「それよりも、お前さんもそのお刺身を食べてみなさい」

 お刺身。この目の前にある魚の切り身のことか。
 若者はそれをまじまじと見つめる。
 「そこに醤油があるじゃろ。それを小皿に入れて、その醤油に切り身を軽くつけて食す。…しかし、最近はつくづく便利になったものじゃな。これは相当鮮度が良い」
 老人に教えられたとおり、若者は、醤油とかいう名前のソースを小皿に取り、皿の上の赤い切り身を箸でつまみ、小皿の醤油につけてそのまま口に運んだ。
 「むぅ、これはうまい!」
 「じゃろうな」
 ニヤニヤしながら老人が言う。
 「向こうでは生魚を食べる風習が非常に浸透しているそうじゃが、この味を知ると納得じゃろ」
 「確かに。これならかえって調理しない方が美味かもしれませんね」
 「かの地では他にも、米の飯と刺身を一緒にして、『寿司』などと呼んで食しているそうじゃ。今度アマツに行った際に味わってくると良かろうて」
 「確かに、これは米の飯が欲しくなるかもしれませんね」
 老人と若者は、それからしばらくの間、料理の味に舌鼓を打ち続けた。
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