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フェイヨンの隠者 ~年老いた軍師の回想録~
その昔、ラグナロクオンライン(RO)のIris,EirサーバでGvGを戦った、叩き上げの元参謀がフェイヨンの酒場で静かに語る昔話。そして彼がかつて戦場にあった折、経験の中で得た、いくつかの教訓と知識。
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3,偉大なる指導力-ギルドにおける「人」-(28)
「どうじゃな、これで分かったかな? ギルドの中の、『人』を活かすために考えるべき、さまざまな事柄を」
「はい、よく分かりました。今後は留意することにします」
「うむ、後はそれぞれのギルドによって考えるべきことも異なろう。自ら考究することじゃな」
 老人が返事を返したところで、
「おーい、お二人さん、今日はもう看板だから、そろそろあがってくれますかねぇ」
 と、酒場のマスターから声がかかった。そのまま彼はカウンターの裏へと消えていく。
「あ、はいー」
 若者はマスターに答える。酒量を重ねていたわりには、ほとんど酔いを感じさせない立ち居振る舞いで、彼は椅子から立ち上がり、
「それでは、今日はこれにて失礼します」
 と老人に声を掛けて、立ち去ろうとした。
 そのときだった。

「待て!」
 凄まじい声を背後に受けた若者は、身をびくりと波打たせて、背後を振り返った。
 そこには、先ほどとまったく変わらない風景があった。テーブルに座る、もはや戦場には立たないはずの、一人の老人の姿。
 戦場における活躍もかくありきと思わせるほどの、裂帛の気合に満ちた先ほどの一言が、まさかこの老人から発せられたとは、若者には正直信じられなかった。
(何か、老人に不快な思いをさせることをしていたのだろうか?)
 と記憶をたどっても、心当たりはまったくない。半ば混乱しながらも、青年は老人に向き直った。
「は、はいっ、何でしょうか?」
 よく見ると、あれだけの気合で若者を呼び止めたにしては、老人の表情は驚くほど穏やかであった。
(怒っている…というわけでもない…)
 その疑惑を解くかのように、老人は口を開いた。
「お前さんは、重要なことを忘れておるようじゃの」
「…重要なこと?」
「確かに、今夜わしはギルドにおける人について語った。いくつかの知識を、経験を交えながらな。じゃが、その様子では、お前さんにその力を使いこなすことなど、到底できぬじゃろうな」
「それは…何故ですか?」
「まだ思い当たらぬか。わしが語ったのは、ギルドという仕組みを円滑に動かす術。が、そもそもギルドを動かす力とは何か。何が人々を駆り立てるのか。何を望んで、人は攻城戦に出て行くのか。そうした人の心が読めておらぬと、どんな知識も何の役にも立たぬぞ」
 吐き捨てるように言う老人。
 …もしかして酔っているのだろうか? いや、違う。
 若者はその可能性を否定した。先ほどから老人の目を見て話しているが、その眼光は明晰かつ鋭利なものだ。酔眼などではない。
 何かを忘れている…そう考えたとき、若者は忘れていたものに気づいた。

「…確かに、忘れておりました。…本日は、誠にありがとうございました」
 言うと、若者は老人に向かい、深々と頭を下げた。
「分かったようじゃな」
「はい、迂闊といえば迂闊でした。いろいろとお教えいただいたにもかかわらず、御礼を忘れていたとは。申し訳ありませんでした」
「わし自身のことはいいんじゃよ。が、人に動いてもらおうとするならば、その感謝の情は、ゆめゆめ忘れないことじゃ。自分のために、ギルドのために、みんなのために、無償で動いてくれる人々が、どれほどありがたいものか。今日話したすべてのことは忘れてもよい。が、これだけは覚えておけ。皆のために動く人に感謝し、その心を皆の前で伝えること、をな」
「…そうですね。分かりました。胸に刻んでおきます」
「そしてもう一つ。知ることと為すことは違う。どれほど知識を蓄えても、それを使おうとしなければ、使わなければ、いかなる役にも立たないし、意味もない。多くの者たちがこれを顛倒してきた。このことも忘れないことじゃ」
「はい」
「すまなかったな。立ち去り際に呼び止めたりなぞして」
「いえ。ご老人のおかげで、私は大事なことを気づかせていただくことができました。それでは、本日はこれにて」
「うむ。また会おう」
 若者は再び一礼すると、静かに立ち去っていった。

「マスター、おるんじゃろ?」
 カウンターのほうを振り返らずに、老人は独語した。
「老師が大声を出すから、何事かと思いましたよ」
 その声を聞いて、老人はテーブルから立ち上がり、カウンターのそばに歩み寄った。すでに後片付けが終わったバーテンダーが、カウンターに戻ってきている。
「すまんな。が、あれで、彼は誤るまいよ」
 老人は真摯な表情で、語を継いだ。
「あの若者は、わしの中にある、何者かを捕まえようとしておる。経験と知識に固められたわしの心臓を断ち割って、そこに流れる暖かな血潮をすすり、自らの力としようとしておる。それほど道に真摯な者はめったにおらぬがゆえに、わしも全力で当たらねばならぬわ。…ん、何じゃその顔は」
 バーテンダーの表情が急に笑いを含んだので、老人が怪訝に思って尋ねる。
「いえいえ。なにやら楽しそうに見えましたので」
「バレたか。うむ。楽しみじゃよ。彼らのような者たちが、かつて我々が歩んだ、光と熱に満ちた時代を、再び呼び戻してくれる…そんな気がしたのでな…」
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