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フェイヨンの隠者 ~年老いた軍師の回想録~
その昔、ラグナロクオンライン(RO)のIris,EirサーバでGvGを戦った、叩き上げの元参謀がフェイヨンの酒場で静かに語る昔話。そして彼がかつて戦場にあった折、経験の中で得た、いくつかの教訓と知識。
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3,偉大なる指導力-ギルドにおける「人」-(24)
「他の意味…ですか。何でしょう。私も結構真剣に聞いていましたが、分かりませんでした」
「よろしい。ではここは一つ、お前さんに少し頭をひねってもらおうか。聞いているばかりで疲れたじゃろ。わしがこの話に込めた他の意味、とは何か? 考えてみるがよい」
「…うーむ…」
 若者は、グラスの白ワインを飲み干すと、それをそのままテーブルに置き、額に手を当てて考え込み始めた。
 老人は、微笑を浮かべながら、その様子を見つめている。
「難しければ、少しヒントを出そうかの? いきなり言われたのではさすがにきつかろうて」
「いえ、もう少し考えさせてください…」
 さすがに容易には分からないのだろう、若者の表情は真剣だった。
「よしよし、分かった。たまには頭を動かすのもいいもんじゃよ」
 あえて自力で解きたいというのであれば、何も言うことはない。あたかも孫になぞなぞを出しているかのような表情と声で老人は答えた。

 若者は考え続ける。
 老人はおもむろに椅子から立ち上がると、もう誰もいなくなった店内をゆっくり歩き出した。
「…今までの話の流れからすると、アクションを起こしているのはきっとご老人に違いない…。そして、ご老人がそのときに取られたアクションは一つ、突撃方法の提案を他のメンバーに委ねた、ということだけだ…」
 若者が独り言をつぶやきながら、事柄を読み解こうとしている。その様子に気づいているのかいないのか、老人は独語した。
「戦には進退が付き物。進むことばかり知って退くことを知らぬは良将とは言い難し」
「…! わ、わかりました!」
 深夜にもかかわらず、若者は大声を出してしまった。が、この酒場は住宅からは遠い。この程度の喧騒は気にする必要はない。
「ほう、分かったかね」
 若者の声の大きさなど、まったく気に留めなかったように、老人はゆっくりとテーブルに戻り、腰を下ろした。

「では、聞かせてもらおうかの」
「ご老人が、突撃方法の提案をあえてなさらなかったのは、他の人々に貢献者になる機会を作った、ということの他に、もう2つ意図があったのですね」
「ほぅ、して、もう2つの意図とは何じゃね?」
「一つは、自分自身への過剰な負荷を回避したこと。これは先ほどのお話でお伺いした負荷分散のテーマにつながります。ですが、もう一つ語られていないことが見つかりました。それは、ご老人が、ギルド内から貢献者として固定的に認識される、ということを避けられた、ということではありませんか?」
「んー? それはおかしくはないかのぅ。貢献者がある程度固定されていなければ、メンバーは誰に対して問題を提起すればよいのかね。役割を割り当てなければ、負荷分散も、仕事もうまくいかなかろうに」
 どこかとぼけたような口調で老人は若者の問いをいなす。だが、青年はその、一見不合理なアクションが、何ゆえ行われたのか、その理由を認識していた。

「先ほどご老人は、進むことばかり知って退くことを知らぬは良将ではない、と言われました。ということは、ここでご老人が一歩引かれたのは、将として何らかの認識がおありだったからです。おそらくこのとき、ご老人はすでに引退を決断されていたのではありませんか?」
「さて、どうじゃろうな。仮に引退を考えていたとしたら、どうなのかね?」
「もし引退してしまえば、少なくともご老人が持っている同盟へのパイプ、戦略、戦術構想能力といった、ギルド内のいくつかの能力の低下は避けられないでしょう。となれば、ご老人ほどの人だ。この力を誰かに譲り渡すなり、何らかの形で残すなり、手を打とうとするのではないか、と考えました。その一つが、あえて自分自身を貢献者のレッテルから引き離し、他のものにそれを委ねること、ではないかと…」
「ふむ、なるほどのぅ」
 まるで他人事のように老人は感心する。若者は続けた。
「仮に引退を考えていなかったとしても、自分が持っている能力の一部を渡すために他のメンバーに機会を与えておけば、バックアップとしての役割も果たしますし、一部の人間に貢献者のレッテルが固定化されるのを防げます。…つまり、ご老人は自分の引退への対応と、貢献者の固定化という事態を避けること、この2点のために、あえてご自分で提案されなかったのではないか…と、私は考えました」

 言い終わって、若者は老人の顔を見た。だが、その表情は真剣そのもので、それ以外の感情は読み取れない。
 間違えたか。自分の言ったことは的外れだったのか。
 そう思って軽く後悔しそうになったとき、老人はニコリと笑った。
「うむ。結構結構。その通りじゃよ」
 言いながら、老人は若者に向けて拍手を送っていた。
「よく見抜いたの。まったくその通りじゃよ。もはや補足の必要すらないわい」
 ほっ。若者は胸をなでおろし、老人に答えた。
「ご老人のあの言葉がなかったら、私にもきっと分からなかったでしょう」
「そうか。あれは大事なことじゃよ。進み続けることは無論重要じゃが、必要によっては退くこともまた知恵の一つ。そこまで目が行き届かなくては、人を率いるときに迷惑を掛けるからの」


 さて、お話だけで結構な分量になっています。
 この解説は次回に回しましょう。
コメントをいただいたので返信~。

見えざるお客様へ

 いただいたコメントにある通り、初めて提案をするメンバーの場合、その行為そのものに多かれ少なかれリスクはつきます。
 ので、大抵そういう時は一緒になってレビューして隙をなくしたり、発言場所に一緒についてって、本人以上の援護射撃をしてフォローするとかします(何

 その意味では、あくまでも提案自体は発案者に行わせる一方で、自発性を損なわず、かつリスクを軽減する形で経験者がフォローする、というのが理想的な形なのかもしれません。

 忙しいとなかなか難しいんですけどね。
 ただ、ROはやっぱりゲームなので、そうしたことができる遊びの部分を作っておくことも大事かなぁ、と私なんぞは思っています。
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